研究を始める前に、研究に関するエッセイや研究計画の概要の提出を要求されることが時々あります。これは、研究する個人が、課題の主旨を十分に理解している事、研究課題と仮説を明確にしている事、研究論文の構成を熟慮している事を証明する為です。このような概要の様々なテンプレートや例は多数ありますが、大抵の場合、先ずは論文の供述と研究課題を論文の一番上に書き、その後で、それらを支えるアイデアや要素を英数字、デシマル、文章で記載したいかを決めるように、というような説明です。
これは学術文書の下書きの準備をする概要には非常に役立つ方法の一つですが、この記事では、実験や研究を終了して、その実験内容を適切に論文や出版用研究文書にまとめる為の概要の書き方をご紹介します。
研究文書の概要(アウトライン)とは?
研究プロジェクトの概要の作成とは、単にビュレットを用いて箇条書きにするだけではありません(概要の中ではビュレットを使用して箇条書きにしても問題ありませんが)。自分の研究の全てを整理して、熟考して、研究の主旨を、研究文書の基盤となる文書構成と合わせていく必要があります。
概要を作成するスタイルには2つあります。これらのスタイルを、要約スタイル(abstract style)と文書スタイル(paper style)と呼ぶことにしましょう。これは、この初期時点で研究内容がどの程度要約されているか、もしくは研究方法やデザイン、収集データが、如何に複雑で広範囲に渡っているかによって、どちらのスタイルを使うかが決まります。更に概要のスタイルは、どの程度明確に詳細を記述したいか、もしくは論文を書き始める前に、どの程度の情報整頓と情報構成が必要があるかにもよります。
概要とは、建築現場の足場のようなものです。研究論文の詳細をスムースに埋めていく為に必要な構造です。
目次:
1.アブストラクト(要旨)スタイル(abstract style)概要のフォーマット
2. ペーパー(文書)スタイル(paper style)概要のフォーマット
3.英文で研究論文を執筆する際の概要作成のコツ
アブストラクト(要旨)スタイル(abstract style)概要のフォーマット
論文概要のアブストラクトスタイルは、論文内の要旨(abstract)に似ていて、研究内容を十分理解する為の重要な質問に対する短い回答です。
1.なぜその課題を選んだのか?
2. 何をしたのか?
3.どのように行ったのか?
4. 何を発見したか?
5. それは何を意味するのか?
6. 今、あなたが、我々が、もしくは誰かがするべき事は何か?
上記の質問が典型的な研究論文の概要と原稿の課題を構成します。そして、これらの質問は、ゆくゆくは消却され、序説/背景、目的、方法、結論、論議、結論等のヘッダーに置き換えられます。最初に上記の重要な質問にキーワードや短文を使って答え、原稿を書く際それらの構成や情報に沿って最後まで忠実に執筆する事により、あなたの論文には一貫性があり、論文の異なる箇所によって筋の通らない大きな相違や矛盾が無い事を保証してくれます。
注意深くアウトラインの要旨を下書きすれば、論文の各箇所に適用できます。更に、あまり重要でない部分を削除して、絶対必須な部分のみに縮めると表題(タイトル)が明らかになり、それから論文の主旨となるキーワードを選び、矛盾無く一貫して、論文の序説、研究方法、結論、論議に広げていくのです。
論文の概要(アウトライン)の例 (アブストラクト スタイル)
大学のオンライン授業の出席率に関する研究をしたとして、上記の6つの質問を使ったアウトラインの作り方を見ていきましょう。
1.なぜその課題を選んだのか?
コロナ禍の始まりから、世界中の多くの大学が、一時的であれオンライン授業に変換していきました。学生たちの通学時間がなくなったので、全体的な出席率が増えたか知りたかった。
2. 何をしたのか?
自分が通う大学の科目別に、コロナ禍前(オフライン)とコロナ禍最中(オンライン)授業の学生たちの出席率を比較した。
3.どのように行ったのか?
先ず人気の高い五つの学科(ビジネス、法律、医学、心理学、芸術/デザイン)を選び、それらの各学科から普通科目を一つ選んだ。そして各科目の教授と連絡を取り、匿名扱いの出席率の提供を求めた。
4. 何を発見したか?
医学と法律学科に関しては出席率にはそれほどの差はなかったが、後の3学科に関しては出席率が少し減った。男性生徒と女性生徒の差は無かった。
5. それは何を意味するのか?
コロナ禍中には自宅から大学キャンパスへの通学時間が無くなったにも関わらず、学生たちの出席率に変化は無く、教科によっては以前よりも出席率が減ったものもあった。
6. 今、あなたが、我々が、もしくは誰かがするべき事は何か?
対象学生に関する他の情報を何も入手していない為、あり得る理由の推測しか出来なかった。次のステップでは、学生たちがオンライン授業にどう取り組んでいるか、そして、この状況下での経験が、一般的に大学教育に利益をもたらすかのアンケート調査を行いたい。
文章の代わりにキーワードを用いて質問に答えても同じアウトライン構成ができます。また、研究方法の詳細や統計分析から得た結論を更に付け加える事も出来ます。ただ、論文執筆の基盤になるアウトライン構成では、全情報を、上記の回答のように絶対的な必然情報に絞る必要があります。
でも、あなたの研究は複雑すぎて必然情報に絞れないと思うかもしれません。これらの質問をと自ら集めたメモ書きやデータを照らし合わせると、このような簡単な答えに絞るのは無理と思うかもしれません。もしくは、論文を書き始めた時と比べて、焦点が全く別の方向に行ってしまい、研究の主旨や結論が定かではなくなってしまったかもしれません。もしもそう感じるのであれば、下記で説明するペーパースタイルのアウトライン型の方が合っているかもしれません。
ペーパー(文書)スタイル(paper style)概要のフォーマット
ペーパースタイルのアウトラインの目的はアブストラクトスタイルと同じです。それは、研究の思考と順序、研究で用いた方法やツール、行った全ての実験、収集/分析した全データ、研究結果を整理して、論文の主旨や読者に伝えたい結論を定める為の明確な文書構成を作り上げる事です。
先ず、行う研究、既に行った実験、覚え書き、ラボの研究本、事前に読んだり使用した文献から得た全ての思考を書き出しましょう。長さに制限はありません。これらのアウトライには、あなたが抱いた初期アイデアの全て、予備試験や実験のタイムライン、研究の途中で方向を変えたり新しい実験を取り入れた理由、スーパーバイザーや先輩、または会議のプレゼンで既に受けたフィードバックや批判、将来の研究に導くアイデアを書き込みます。もしも卒業論文や初めての出版物の執筆であれば、おそらく非常に乱雑なアウトラインになっている事でしょうが、だからこそ、文書に仕上げる前の論文構成が重要になるのです。
では、研究において、既に行った実験を書き込んだとしましょう。でも、それらの全情報を読者に投げつけて、読者に理解させようとすることは出来ない事はお分かりですね。あなた自身で、重要な情報のみを含めた明確で一貫したストーリーを作り上げ、アブストラクト スタイルのアウトラインと同様、研究課題の最初の問いから、この研究で明らかになった事と、それが何を意味するのか、最後まで読者を先導するべきです。
予測した研究結果が出なかったり、研究を円く収める為に研究結果を偽るという目的ではありませんが、読者に、関連文献を検索した後で研究の課題を変更した詳しい理由や、失敗した予備試験を何から何まで読者に伝える必要はありません。アブストラクト アウトラインで使った簡単な6つの質問の代わりに、乱雑な覚え書きを整理して、主要な箇所を書き込みましょう。更に、論文構成の際、その箇所にどの情報を挿入するかも明確に書き込むように。
1.序説箇所(Introduction Section)
どの分野研究であるか?
課題を決める前に読んだ他の文献
誰に読んで欲しいか。それらの読者にどの程度の研究情報を理解して欲しいか。
行った事項を2つの文章で要約できるか。
明確な仮説があったか。無かったならば、考え得る結果は何であったか。
2. 方法箇所(Methods Section)
全手法、質問、行った試験をリストする。
その手法は、研究分野の基準に沿っていたか。
年代順、もしくは課題順に全てをリストする。どちらの順にするべきか分からない場合は、writing the Methods section (研究方法箇所の書き方)をご覧ください。
3. 結果箇所(Results Section)
方法箇所で使用したタイムラインやトピックで表現すること。
序説箇所であげた全質問に答えること。
表(tables)、グラフ(graphs)、他の視覚化方法(other visualizations)を用いて読者を先導すること。
方法箇所で記載の無い試験結果や分析は記載しないこと。
4. 論議/結論箇所(Discussion/Conclusion Section)
行った実験とそこから発見した事項を手短に要約する。結果を復唱しないこと。
その発見は予想通りであったか、新しい驚きであったか、既存の文献に沿ったものであったか、もしくは既存の研究論文と異なっていたか。
自分の研究結果は一般化されると思うか?特定の職業や他の分野に所属する人々の役に立つと思うか?
その研究には限界があるか?次回も同じ研究をするとしたら、どこをどう変えてみるか?
今回の発見を基にして、将来どのような研究が必要であると思われるか?
5. 結論箇所(Conclusion Section)
これは、あなたから読者への宿題メッセージです。この結論は最初に記載された研究課題と直接関係している必要があります。
さあ、コンピューターのソフトウェアでも手書きでも、自分の覚え書きを整理してみましょう。覚え書きを全て書き込んで、訂正したアウトラインを見直し、記載漏れが無いかを確認します。結論が研究課題に関連している事も再確認して下さい。関連していれば次に進む準備完了です。この後はアウトラインを更に詳細化するか、もしくは短くしてアブストラクトスタイルに当てはめるか、もしくは各箇所のアウトラインを文章にすることもできます。
英文の研究論文のアウトラインを作成する際の更なるコツ
英語を母国語としない筆者であれば、自分の母国語か別の言語で覚え書きを書いたり文献を読んだりして、研究課程において通常は英語で思考しないものです。でも、あなたが英文で論文を書く目的を持っているのであれば、アウトライン工程の初期にキーワードをリストする時のみ母国語を使うことをアドバイスします。ゆくゆくは論文で使いたい文章を書く時点から全て英語を使うことで労力を減らし、後々の工程においての間違いを避ける事ができ、英語思考の脳の訓練にもなります。
もう一つ覚えていて欲しいのは、論文執筆過程において、あまり早い時期から文章で表現し始めると、後で論文構成やストーリーラインを変更するとなったら、多くの文章、時には文節を消却する場合が多々出てきます。英文を書くのが如何に好きか(もしくは嫌いか)によりますが、多くの時間をかけて執筆した完璧な文章や文節を消すのは苛立たしいものです。その為、論文に繋がる堅実なアウトラインが出来上がるまでは、執筆や言葉の選択にあまり時間をかけない方がよいでしょう。
論文の下書きを書き終えた後は、原稿に磨きをかけて、スタイルやフォーマットの間違いを訂正する為の英文論文校正・校閲サービスの利用を考慮してみてはいかがでしょうか。そして、下書きの時点では学術文書の句読点、スペル、文法上の間違いを見つけて訂正するワードバイス AIのWordvice AI無料英語文法チェッカーをご利用下さい。
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