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論文の研究方法(Methods)箇所の書き方

初めて記事がジャーナルで発行される筆者へのよくあるアドバイスは、原稿は研究方法セクション(Methods section)から書き始めるように、今まで行った研究内容を全てリストにするところから始めるように、です。これは初原稿を書く上で実用的な手段のように思えますが、自分が書きたい明確な概要を持っていないと、セクション同士の関連性の無い原稿になってしまう恐れがあります。

論文構成の中心核は研究方法セクションです。論文の最初から最後まで読者を先導し、不明点を残さないためには、この研究方法のセクションが重要な役目を果たします。このセクションの中で、表現不足や読者を困惑させるような記載があると、早期の時点で原稿が却下されたり、出版社と不必要なやり取りが増えてしまします。そこで、ここでは論文での研究方法のセクションが最大の効果を発揮できるコツを紹介します。

実験や研究方法をリストにするだけではありません

論文の序説セクション(introduction section)では、あなたの研究の論理的根拠と研究論点を読者に理解してもらう為に必要な背景を説明します(ジャーナルで規定されているフォーマットや個人的な執筆スタイルによって、序説の箇所で既に結論を要約する事があるかもしれません)が、研究方法セクションでは、何をどの様に行ったかの正確な記述が重要です。ここで肝心なのは、完璧にしようとして、退屈な詳細を長々とリストにしない事。この箇所の目的は、実験過程を模写して、研究結果を立証、確証したり、もしくは研究を始めるまで予測もしなかった強い関連性のある要素についての詳細を読者に伝える事です。

この箇所を出来るだけ読み易くする為には、研究方法セクションで記述する情報が、その前記の序説セクションと後記の研究結果セクション(results section)と明らかに繋がっている事が重要です。年月日順であれ課題別であれ、構成が明瞭で、原稿の後の結論部分で、同じように年月日順もしくは課題別に記述される事が重要です。また、出来るだけ早く研究記事が出版される為には、従うべき公式ガイドラインやジャーナルからの規定、そして避けるべき道徳的な問題があります。

目次

  1. 全般にわたる研究方法の構造: 研究の所説(ストーリー)
  2. 研究方法のどの部分を記述して、どの部分を端折るべきか
  3. 研究方法のセクションでよくある記述漏れ
  4. 考慮するべきジャーナルのガイドライン
  5. 研究方法のセクションで正確で適切な言語

全般にわたる研究方法の構造: 研究の所説(ストーリー)

研究論文を書く時、あなたは様々な実験を行い、研究を始める前に特別な要素を考慮したり、研究課程を終了した後で不明な点を再実験してみたりするかもしれません。でも、それらの全ての情報を研究方法セクションに入れようとすると、本当に重要な情報の関連性や、効果的で適切である方法論的なアプローチを用いた調査内容が読者に伝わらなくなってしまう恐れがあります。その為にも、先ずは明確な概略を定め、何を記述して、どう読者に伝えたいのかを予め決めておく必要があるのです。

先ず(そして最も重要)実験を経過年月順に記述して(例えば実験1、実験2、実験3…)、読者を経過順に導くべきか、もしくは課題別/小項目(サブテーマ)別に記述するべきか(例えばBehavioral measures, Structural imaging markers, Functional imaging markers…)を決めましょう。どちらの記述方法を選んでも、研究方法セクションの様々な部分部分に明確なサブヘッダを用いる事が大切です。そして構成に一貫性を持たせ、読者が困惑しないように、研究結果セクションでも同じ記述方法に沿って記述する事が更に重要です。(下記の2例をご覧ください)。

どちらの記述方法で実験を記述するべきか迷っている場合は、下記の質問に答えて下さい。

実験の経過年日時、実施計画(プロトコル)、そして実験設定が読者を困惑したり不明確ではないかと感じた場合は、ビジュアル効果のあるグラフ、フロー図、決定木(decision tree)、表などを挿入する事をお薦めします。

研究方法のどの部分を記述して、どの部分を端折るべきか

答えは簡単です。あなたの研究を他の研究者が模写できる為に必要な、全詳細を記述するべきです。あなたが将来自分の論文の研究方法のセクションを読んで、事前知識無くして同じ実験を行うと仮定してみて下さい。おそらく以下のような質問を問う事でしょう。

実験の全詳細を提供する際、読者に、定義、参加者のグループ、特定の試薬量を選んだ理由を簡単に伝える事が大切です。同じ研究方法を用いて既に発表されている研究があるのであれば、それらの研究を文献引用します。その詳細の実証実験を行ったのであれば、実験経過と概略の詳細を読者に伝えましょう。文学や常識に基づいた適合性の憶測の研究を行ったのであれば、その詳細を読者に説明しましょう。

要するに既存の研究方法は文献引用が必要であり、新しい研究方法は明確で簡潔な説明と正当性が必要です。しかしながら、あなたの研究データや現象の分析に対して、伝統的な研究方法とは異なる新しいアプローチや研究方法を使うことが、その研究の主なポイントである場合(おそらく記事の題を見れば明らかかもしれません)、序説のセクションで、何故そのような方法をとったのか理論的に説明をして、その詳細は考察セクション(discussion section)で記述しましょう。

研究方法セクションの終わりには統計解析の説明が必要です。これらの統計の結果は、後の研究結果セクションで記述しますが、研究方法セクションでも、例え今回のアプローチが前例の無いような新しくて珍しいものであっても、このアプローチが正当なものである説明が必要です。

記載すべきでない詳細は?という問いに対する回答も簡単です。将来自分の研究を模写する時に要らないであろう情報は全て省くべきです。例えば、実験参加者の教育レベルの情報を持っていたとしても、それが研究に関係性のない情報であれば省くべきです。他にも研究方法のセクションに入れなくてもよい情報は下記の通りです。

·         序説のセクションで既に記述済のバックグラウンド情報

·         他の研究方法に関する念入りな比較。これらは考察セクションで記述します

·         実証実験の概要が主要実験の要素を決める手掛かりにならないのであれば、ここでの研究結果の記述は不要。

更に、サブヘッダは出来るだけ明確で、研究結果セクションの構成に適していて、その上ジャーナル既定のガイドラインに沿っている事が重要です。あなたの研究が参加者の病気治療に関してだったとすると、あなたの研究方法セクションはおそらく下記のようになるでしょう。

Material and Methods (材料と研究方法)

1.Patients (患者)

Recruitment (参加者募集)

Screening, Inclusion and exclusion criteria (スクリーニング、算入、算出基準)

Baseline evaluation (基礎的評価)

2. Study design (研究デザイン)

Location (single-center vs multi-center) and timeline (場所/1か所もしくは複数の場所と経過年月日)

Assessments (査定)

Interventions (治療)

Outcome variable (結果変数)

Adverse events and drop-out criteria (有害事象と脱落基準) 

3. Statistical analysis (統計分析)

Sample size and power estimation (サンプルサイズと予測力)

Tests, hypotheses, significance level (テスト、仮説、有意水準)

ここでの主なポイントは患者主体の結果変数である為、あなたの研究結果セクションも患者主体の結果変数であり、ヘッダーもそれに沿って選択するべきです(例えば患者の特徴、基礎的評価、結果変数1、結果変数2、脱落率)。

もしも、あなたの研究が実証実験も含めて顔認知に関する研究を定義付けるビジュアル実験であるなら、研究方法セクションは、例えば下記のように、前記とは全く別の構成になる事でしょう。

Material and Methods (材料と研究方法)

1.Pilot: Creating normalized face stimuli (実証: 正常な顔の定義付け)

Participant recruitment and sampling (参加者募集と抽出)

Stimuli: databases and software (定義: データベースとソフトウェア)

Experimental setup and procedure (実験設定と経過)

Analysis and stimulus selection for main experiment (主実験の分析と定義選択)

2. Main experiments (主実験)

2.1 Discrimination and classification experiment (識別と分析の実験)

Participant recruitment and sampling (参加者募集と抽出)

Experimental setup and procedure (実験設定と経過)

Data analysis and statistics (データ分析と統計)

2.2 Familiarization and adaptation experiment (習熟と適応の実験)

Participant recruitment and sampling (参加者募集と抽出)

Experimental setup and procedure (実験設定と経過)

Data analysis and statistics (データ分析と統計)

実証実験の分析と概略は既に研究方法セクションで記述されている為(主実験の設定と経過の基礎として)、研究結果セクションでの再記述は不要です。その代わり、2つの主な実験(識別と分析の実験、習熟と適応の実験)を研究結果セクションに入れるか、もしくは、研究方法セクションで記載した各テストや潜在的な相互作用に分けて結果を記述する事も出来ます(Discrimination performance/識別性能, Classification performance/分類性能, Adaptation aftereffects/適応後遺症, Correlation analysis/相関分析)

研究方法のセクションでよくある記述漏れ

製造元情報: 実験室や技術器具に関しては、モデル名、製造業者名、業者所在地を明記します。記載詳細の一般的なフォーマットは、米国の製造業者の場合は、プロダクト名(会社名、市、州)です。米国以外の場合は、プロダクト名(会社名、市町村、国)です。

サンプルサイズと推定力: サンプルサイズと推定力は、統計的有意性の為、そして研究結果が意義のある終結になる為に必要とされた患者や参加者の人数を測るものです。医学以外では、“多ければ多いほど良い”というアプローチが今でも時々行われますが、今では多くのジャーナルで詳細の規定がある為、このステップは重要です。

倫理指針と承認: 実験の説明の他に、編集者やレビュアーに、あなたの研究方法と実施計画は倫理基準と指針に基づいている事を保証する必要があります。これは、地元や全国的な倫理委員会の承認を得たり、その委員会の名前と所在地、そして承認された参照番号を含めたりする事です。そして、実験を始める前に、参加者から、事前に実験の詳細の説明があった旨の同意書に署名をして貰う必要があります。動物対象の実験の場合は、実験過程はヘルシンキ宣言(Declaration of Helinki)に沿っている旨の陳述が必要です。ジャーナルによっては、その陳述を研究方法セクションではなく、主文の最後に記述するように指示する所もあるので、投稿するジャーナルのガイドラインを注意深く確認して下さい。

更に考慮するべきジャーナルのガイドライン

文の構成とワード数規制: 文書スタイルのガイドライン(例えば社会科学や心理学ならAPAスタイル、医学研究ならAMAスタイル)を取り入れて、研究方法セクションのヘッダは筆者に選ばせてくれるジャーナルが多いのですが、サブヘッダやヘッダの長さや数の規定があるなど、細かいガイドラインや原則を設定しているジャーナルもあります。投稿する前に、そのジャーナルの説明書を注意深く読んで、必要であれば研究方法セクションの構成を変更して下さい。ジャーナルからの規制で必要情報を全て記述する事が出来ない場合は、通常はサプリメンタルのファイルとして追加提出が許可されます。

基準チェックリスト:

倫理的なガイドラインと承認に加えて、しばしばジャーナルから、あなたの原稿に全ての必要詳細が含まれている事を保証する為、別の研究の正式な基準チェックリストの提示を求められます。例えば、無作為治験に関するチェックリストはCONSORT (Consolidated Standards of Reporting Trials)、コホート研究、ケースコントロール研究、断面研究に関するチェックリストはSTROBE (STrengthening the Reporting of OBservational studies in Epidemiology)、診断精度に関するチェックリストはSTARD (STAndards for the Reporting of Diagnostic accuracy studies)、システマティックレビューとメタアナリシスのチェックリストはPRISMA (Preferred Reporting Items for Systematic reviews and Meta Analyses)Case reports CARE (Case Report)です。

原稿は片側盲検(single blind)か二重盲検(double blind)レビュー過程のどちらを使用するか確認して、執筆者の所在地がレビュアーに分かってしまうような情報は全て消却します。というのは、研究方法のセクションではあなたが所属している機関の名前や所在地、特定のテストを行った人名、倫理委員会の名前の記載は許されないからです。

研究方法のセクションで正確で適切な言語

論文の全セクションと同様、研究方法セクションでは学術的な執筆をするべきです。つまりフォーマルな形式で、曖昧な表現や口語体言語は避け、全ての引用元は文献引用に正しく記載するべきです。参加者(人間)に関して研究方法セクションで記述したのであれば、言葉の選択は特に注意するべき点です。例えば、“参加者(participants)”の方が“対象(subject)”と表現するより敬意を払った言い方ですし、患者に焦点をあてた言い方、例えば“patients with cancer”の方が、“cancer patients”よりも適切であると見なすジャーナルもあります。

研究論文では、受動態(passive voice)が基準であると見なされますが、出来るだけ文脈が明確になる為に、研究方法セクションで受動態と能動態(active voice)をミックスしても全く問題ありません。実験内容は単なる過去形、図や表の説明には現在形を用いて下さい。詳細は研究論文での動詞の時制の使い方をご覧ください。

最後に、使用した全てのスタンダードテストやアンケートは正しくラベル付けする事をお忘れなく(不明な場合はオリジナルの発行物で調べる事)、そして、研究した生物の遺伝子や蛋白名の綴り方はHUGO Gene Nomenclature Committee database for human studiesのような共通データベースの情報に従うべきです。

ジャーナルの編集者に原稿を提出する前に、是非Wordvice AI英文チェッカーをご利用ください。

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