こんにちは!英文校正ワードバイスです。
卒業論文で初めて論文執筆を経験する学生の皆さんや駆け出しの研究者の皆様は、「論文で引用する文献の数」は普通どれくらいが適切なのだろうか、という疑問を感じたことがあるのではないでしょうか。一つの論文で引用される文献の数は多ければ多いほどいいというわけではありませんが、かといって、決まったルールがあるわけでもありません。
本日の記事では、そのような参考文献数に関わる疑問を答えるために研究論文での参考文献数の分野別目安や、判断基準となる事項について解説しています。
文献引用の必要性
研究論文で文献を参照する目的は、あなたが該当分野で現在まで行われてきた先行研究や既存知識について網羅的な情報収集および考察が済んでいるということを示すことです。それはあなたの研究の「最新性」を保証する方法でもあります。このように、研究の権威・重要性・信頼性は、他の文献について「批判的考察」を行った上で自身の研究を差別化できているか、という点に大きく左右されます。ただたくさんの文献引用することが先行研究に対する「批判的考察」とは言えません。どれだけ多くの文献を引用したとしても、それに対するあなたの視点と根拠に基づいた分析が行われなければ意味がありません。参考文献に関しては、「量より質」と考えましょう。
「量」が問題になる場合
文献引用の数より質が問題と言っても、引用文献が少なすぎたり多すぎたりする場合には問題になることがあります。
- 研究が活発に行われている分野の研究論文にも関わらず文献参照が著しく少ない場合、読者は「先行研究の考察が甘いのではないか」という印象を受けるしかありません。分野が一般的であればあるほど、同様の手法や同様のテーマで数え切れぬほどの研究が行われてきたはずだからです。あなたの論文はどのような部分で画期的と言えますか?引用文献が少ないのは、ただの怠慢が理由ですか?常に自問自答しましょう。また、適切な引用が行われていないのは論文における盗用を疑われる要素にもなります。あなたが 26ページのPhD thesis で自身の過去の研究を含み2つの文献しか引用しなかったジョン・ナッシュでもない限り、少なすぎる引用は様々な危険を孕んでいることを認識しましょう。
- 反対に、論文内で引用があまりにも多い場合、読者は一体この論文が提供している新しい知識とは何なのか、と疑わしく思ってしまいます。文献レビューレクションを除き、論文はあなた自身の新しい発見や発明に主眼が置かれていなくてはなりません。引用はあなたの着眼点やアイデア、分析に根拠を提供するための要素であり、引用に発見事項が埋もれてしまっては本末転倒です。
ここで、citationsとreferencesの違いについて説明しておきましょう。 Referencesは情報ソースそのもののことを言います。したがって、一つの情報ソースは参考文献リストで一度のみ記載されます。一方、Citationsは論文内で触れた情報のソースを示す標識のことを言います。同一のreferenceについて論文内で何度もcitationすることができるため、CitationはReferenceの数より常に多くなります。
参考文献の数に影響を与える要素
参考文献の数は以下のような要素に左右される傾向があります。
- 参考文献の数は論文のタイプに大きく影響を受けます。例えば、文学やシステマティックレビューのような場合、既存の論文や作品に対するレビューが論文の主な内容となるでしょう。このような場合、参考文献の数は他分野の論文に比べて当然多くなります。実際にジャーナルのガイドラインを確認してみれば、レビュー論文の場合研究論文よりも参考文献数の上限を多く設定していることが分かるでしょう。
- 参考文献の数は研究分野によっても異なります。例えるなら神経寄生生物学(neuroparasitology)など、新興分野の場合は引用できる先行研究自体が少ないことも考えられます。そのような場合は、まずいくつかの研究を探し、そこで引用されている研究を更に参照するという方式で関連する知識に当たっていくのが効率的です。
- 所属機関やジャーナルの投稿規定に制限される場合もあります。卒業論文や学位論文などの場合、まずは大学の規定に従わなければなりません。一般的ではありませんが、一部の大学や研究機関では参考文献数について厳しい制限を設けているところもあります。ジャーナルの場合は印刷などの関係で明確に参考文献数制限が設けられている場合が一般的です。
- 引用したくても、その文献にアクセスできない場合もあるでしょう。文献集めに困ったら、所属機関の図書館などに複写や取り寄せの協力を求めてみるのも手です。
- 分野を問わず、かつてないほどに研究が活発に行われている現代では、引用できるデータの数が単純に増大するのに応じて引用文献数も多くなる傾向があります。該当分野で引用文件数がどのように推移しているのか簡単に把握しておくと良いでしょう。
- 論文の長さと引用文献数は大方比例します。
最適な参考文献数とは
引用文献数が十分であるか確認するためのいくつかの指標をご紹介します。また、引用というテクニックをうまく使うためのコツも一緒に紹介していきます。
ジャーナルを参考にする
- 自分が書こうとする論文の形式や分野では通常いくつほどの文献が引用されているのか調べてみることが、感覚を掴むためには最も簡単な方法です。そのためには、ターゲットジャーナルのガイドラインと掲載論文の引用文件数をチェックしてみるのが早道です。
- 自分と同じトピックについて扱っている最新の論文をいくつか参照してみましょう。全体引用数に加え、1ページ内で引用が登場する頻度なども参考にできます。
- もちろんこれらはあくまで参考であり、必須ではありません。くれぐれも、「1ページに必ず3つの引用を含まなければならない」などと理解しないでください。Resultsセクションのように、ほとんど引用が使用されないセクションもあります。
引用件数の統計
おおまかな基準を知るために、分野別に引用にはどのような特徴があるかまとめてみました。こちらももちろん、参考程度に留めておくことを忘れないでください。
Milojevićの研究によると、1ページあたりの最多参照数・平均参照数は以下のようになっています。
- Ecology: 最多58、平均6
- Math and robotics: 最多28、平均1以下
- Economics: 最多32、平均1~2
この研究は著者が研究を開始してから20年間のデータに基づいたものであるため、現在はこのデータより引用文献数が増えている分野もあります。あなたの該当する分野の最新の発表論文を参考にした方が良いでしょう。
また、Falagas et al. (2013)の調査によると、医療系ジャーナル掲載論文では 平均7.88ページの論文で29件の引用があったと報告しています。
サンプルサイズは小さいですが(63のジャーナル対象)、Gali Haleviは引用の傾向を以下のように述べています。
- 引用が多い分野は、社会学、物理学、天文学、芸術・人文科学 (平均的に54の引用)
- 保健学、地球科学、惑星科学分野では一つの論文で平均8~17の引用と、最も少ない傾向
- 数学、工学系は論文あたり29件程度
- 生化学、遺伝学、分子生物学、その他生物学の平均参考文献は51件ほど
- 数学や社会科学では古い文献も参照する傾向にあるのに対し、ハードサイエンス、自然科学分野では最新の研究結果を参照する傾向。
Haleviの研究はサンプルが少なく、更に論文タイプ(研究論文、レビュー論文など)や投稿されたジャーナルの規定などを考慮していないため、注意が必要です。例えばレビュー論文の場合はその性格上基本的に研究論文よりも参照する論文数は増えます。あくまで目安として提供した数字であることを忘れてはいけません。論文を書くにあたって何より重要なのは、ターゲットジャーナルの規定に従うこと、分野の最新のトレンドを研究し、それに合わせることです。
参考文献規定に関してはこちらの記事もご参考ください。
引用・参照するときの注意点
- 参考文献セクションには一つの情報ソースについて一度のみ記載します。リスト内で重複してはいけません。
- 自分の過去の研究や文献ばかり引用するのは避けましょう。外部の文献の引用とバランスをとることは、研究の客観性を保証するために不可欠です。
- 古い文献を参照するのは要注意です。基本的に論文で参照する文献は直近5~6年以内のものであることが原則です。古い文献を参照するのは研究の動機や背景を提供するための補足資料程度にし、参照の85%以上は5年以内のものとするように心がけます。
- 個々の文献の引用目的や意義を明らかにせずに、一か所に複数の文献を参照してはいけません。例えば、“We referred to previous studies in this field (1-7)”とまとめて記述するのは不適切で、この場合は後に1-7までの個々の研究がどのように論文に影響するのか言及する必要があります。
- 文献の信憑性や情報としての質を確かめた上で引用しましょう。引用する文献が研究倫理に関して問題になりそうな部分がないか、情報の価値が保証されているか(ブログやウェブサイトよりもジャーナル掲載論文など)、十分に考慮しましょう。引用文献の信憑性と価値はあなたの論文の信憑性にも大きな影響を与えるからです。
- 文献を参照する意義には、該当分野で穴となっている部分は何か、つまり今まで明らかになっていない「知識のギャップ」がどこにあるかを証明することも含まれます。したがって、外部資料の参照を通して、読者があなたの見出した研究課題に納得できるようにしなければなりません。物語を考えてみましょう。よくできた物語には、無駄な情報や描写が一切含まれていません。読者が不必要な記述に気を取られず、自然にストーリー展開についていけるよう考えられているからです。論文もこれと同様に、論文の筋となる内容を展開する上で必要な引用や参照のみ行うようにします。
- あなたの研究と異なる結果や見解を示している論文を無視してはいけません。論文の客観性と信憑性をアピールするには、価値観のバランスが重要だからです。他の研究結果に対し、なぜ、どのような面で同意できないのか、そしてその証拠は何かを効果的に示すことで、あなたの結論がより強固なものとなります。
- 質的研究の場合、引用は少なくなる傾向があります。
- 論文内で言及しているすべての資料は参考文献リストに記載します。逆に、参考文献リストに掲載されている資料は必ず文中で直接・間接引用されていなくてはなりません。
- 基本的に、引用・参照はIntroductionやDiscussionセクションにて多く行われます。
参考資料
- Stefanie Haustein. Chapter 2 of Multidimensional Journal Evaluation: Analyzing Scientific Periodicals Beyond the Impact Factor. (De Gruyter Saur, 2012).
- Gali Halevi, “Citation characteristics in the Arts & Humanities.” [Note this paper involved a limited sample size and did not factor in article type.]
- Staša Milojević, “How are academic age, productivity and collaboration related to citing behavior of researchers?”
- Falagas, Matthew E., Zarkali, Angeliki, Karageorgopoulos, Drosos E., Bardakas, Vangelis, and Mavros, Michael N., “The Impact of Article Length on the Number of Future Citations: A Bibliometric Analysis of General Medicine Journals.”
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