こんにちは!英文校正ワードバイスです。
前回の記事では、Method(研究方法)セクションの効果的な執筆方法について見てきました。今回は論文の1番目のセクションであるIntroduction(序論)執筆のコツをお伝えいたします。
論文出版を一つのビジネスと捉えるとき、ジャーナルエディターはできる限り読者の興味をそそる論文を掲載したいと考えるものです。序論はそのための「つかみ」にあたる部分として、読者の関心を引き、続く内容を読ませる重要な役割をします。
Introductionの目的
Abstract(抄録)やfigure(図表)などの視覚的資料(visual aids)の次に、読者が初めて論文に触れる部分が序論です。基本的に読者は序論に提示された内容を念頭に置いて続く論文全体の内容を読むことになります。序論では論文内における解釈のルール(rules of interpretation)を提示することで、読者が(結果や考察(Discussion)部分の結論も含めて)論文の全ての部分に渡ってそのルールを論理的に適用させながら読み解けるようにする必要があります。
それでは、序論には具体的に何を書けば良いのでしょうか? 序論を作成する際に考慮すべき事項を見てましょう。
Introductionを二段階に分けて執筆すべき理由
英文校正ワードバイスではIntroduction部分を一番最後に完成させることをおすすめしています。その理由は、他の部分を書き上げてからでないとIntroductionの内容を確定させることが難しいからです。さらにIntroductionは二段階に分けて執筆することをおすすめします。
論文を書き始めたら、まずIntroductionの前半部分として仮説(hypothesis)を先に作成します。次にResults、Methods、Discussionの順です。そして再度Introductionに戻り、後半部分に以下で紹介している「Introductionに書くべき内容」を記述します。
Introductionに書くべき内容
論文は時系列的に展開される物語のように作成しなければなりません。つまり、内容A(Introduction)から始まり、時系列に沿って内容B(Discussion/Conclusion)へと論文全体が自然に展開する必要があります。Discussion部分についての記事も別途用意しておりますが、Discussionセクションでは「現在の科学的知識における空白(knowledge gap)」を埋めるためになぜこの研究が必要だったのか、そして、そもそもその空白を埋めることがなぜ重要なのか、などの質問に対する答えを記述しなければなりません。一方、Introduction部分はそれと似て非なる情報を記述するセクションです。つまり、Introductionではまず ’科学知識の空白’ の存在を明らかにし、本人がどのようにその空白を埋めようとするのか説明することが重要なのです。
論文を下の図の砂時計に例えて考えてみてください。論文の序論とは、私たちが今持っている既存の「知識の砂」を維持している空間に当たります(上部ガラス管)。そして、くびれ部分を通って下に落ちていく砂は新しい知識基盤を積み上げていきます(下部ガラス管)。この考え方によれば、皆さんの論文は砂時計の砂が上から下に落ちていくまでの過程の記録ということができ、その過程で下の図に併記された各段階毎の質問に答えて行きます。その中で序論とは最初の3つの質問に答える出発点としての役割を担うのです。
上の図からわかるように、序論は包括的な内容から始まり仮説に至るまでそのボリュームを段階的に少なくしていかなければなりません。ここからは、上の図式に沿って私たちのアイデアをどのように発展させることができるか考えてみましょう。
その研究と関連する背景知識
一般的にIntroductionにはその研究の意義を説明するために必要な背景知識について記述します。ただし、ごく基礎的な背景知識について過剰に説明を入れてしまうと、論点から逸れる可能性があるので注意が必要です。
- 序論の入りでは研究分野を明確に提示することが重要です。論文のタイトルに含まれたキーワードを意識して活用すると、普遍的すぎる内容を避けて、ポイントが絞られた簡潔な文章にすることができます。
- 分かり切った事実に関して長々と説明するのは避けましょう。まず研究テーマと仮説を書き出して論文の核心を明らかにした後、次に読者がその論文の展開を理解するために必要な背景知識を見極めます。その際、序論にて提示する背景知識は、読者が論文の主張を無理なく理解できるラインまでとし、それ以上掘り下げて詳細に説明するのはやめましょう。
- 該当分野における最新の研究結果を引用します。引用する文献のうち、自身の研究で想定している結果とは異なる研究結果を提示しているものがある場合、その研究の弱点を指摘しながら自身の研究デザインの妥当性を論理的に主張しましょう。
- 文献の引用元は明確に記載しなければなりません。学術界において剽窃は深刻な規則違反行為に当たり、著作権法侵害はもちろん、論文ひいては研究者に対する信頼にも打撃を与えます。他の論文での記述をそのまま盗用したり、原文と酷似した表現を使用したりすることは避けなければなりません。引用する際には内容を自分の言葉で表現し、必ず参考文献として記載するようにします。
- 序論は文献レビュー(literature review)とは異なります。つまり、序論部分で大量の文献を引用しながら背景知識について詳細に説明する必要はありません。あくまで序論では研究テーマと仮説の理解に最低限必要な文献に絞って簡潔に引用するようにしましょう。
研究の方向性
- まず、該当分野にて先行研究が十分に行われていないということを強調します。それゆえにこの研究が有意義であるということ、読者にとって重要な知識を提供できることについても説明します。
- 先行研究での結果に基づく自身の研究の方向性について説明します。該当分野の既存の研究結果について徹底した調査・分析を行い、それに基づいて研究の方向性を定めたことをアピールします。
研究結果の重要性
- まず、研究目的・仮説をはっきりと提示します。 “The purpose of this study was to examine/study X”のような分かりやすい文体を使用しましょう。
- 次に自身の研究を通して発見したことについて説明します。 ターゲットジャーナルの読者が関心を持てるような研究結果であるということを主張します。ただし、Introductionで論文全体に対する結論を下してしまったり、研究結果に偏った記述をしてはいけません。
Introductionセクション執筆のポイント
学術論文で説得力のある序論(Introduction)を作成するために必要な内容を整理すると、以下のようになります。
- 能動態を使用するようにしましょう。
- 簡潔な記述を心がけましょう。
- 名詞化(nominalization)するのは避けましょう。名詞化とは形容詞や動詞を名詞形で表現することです。できれば動詞の形で簡潔に表現するのが適しています。安易に名詞化しないことで文章の意味がより明確になり、能動的な表現がしやすくなります。
- 冗長な文章表現は避けましょう。1文が 3~4行に渡ると可読性は一気に落ちてしまいます。しかし、文章が簡潔なほど理解しやすいとはいっても、すべての文章を小学生の作文のように単純な語彙とSVO形で表現してしまっては味気ない論文となってしまいます。様々な文型と長さを組み合わせ、バランス良く表現するようにします。
- 同様に、セミコロン(semicolon)を含む長い文章や、コンマでつながれた長い節(clause)はできるだけ数文に分けるようにします。
- 広い内容(包括的)から狭い内容(具体的)へと展開していきます。
- BONUS TIP 1: 読者の視線を引くような内容で序論を書き始めます。
- 興味深い逸話・引用文・一風変わった経験など、「創作ノンフィクション(nonfiction)」で使用されるような技法を考慮してみましょう。
- BONUS TIP 2: “斬新な”、“史上初の”、“常識を根底から覆す” などの誇張した表現は使用しないようにしましょう。
- 研究が今ある知識に寄与するためにまだ不十分だと感じられる時には、研究をもう少し進行した後に論文を書き始めてみてください。
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