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【動画】論文受理率を向上させるためのライティング

Improving Research Writing for Publication (Full Lecture)

*2017年11月3日台湾移植学会年会にて、当社トップエディターのKevinが論文ライティングについての講義を行った際の映像です。

英語論文でライティングの質が問われる理由

科学論文の世界では、ジャーナルからの論文リジェクトは例外的な状況ではなく、むしろ一般的だということができます。そのため、ジャーナルからリジェクトの返答を受け取ったとしても、落ち込む必要はありません。一つの経験として、次回の論文投稿に活かせる学びの機会として捉えればいいのです。

これほどにリジェクトが多いという事実を知ってしまうと、誰しも「自分の論文はなぜリジェクトされてしまったのか」という疑問を抱くと同時に、「なぜこれほど多くの論文がリジェクトされているのか」という素朴な疑問を抱くこともあるでしょう。

論文がリジェクトされてしまう一つの大きな要因として「ライティングの質」があります。皆さんも、査読コメントで内容以前にライティングを指摘されてしまった経験が、一度はあるのではないでしょうか?

もちろん、英語の上手さよりも中身の価値を読み取ってほしいと願うのは、どの研究者も同じですが、残念ながら学術誌に投稿される論文のうち、いまだに非常に多くの論文がライティング面で致命的な問題を抱えているのは事実です。スペルや用語のミスが頻発していたり、論文の構成に対する理解が未熟だったり、ライティングが読みにくい論文は、それだけでリジェクトの対象となるだけでなく、条件付きアクセプトの形でエディターや査読者からのコメントを受け、修正・再投稿・再審査というプロセスに時間と労力を費やす原因ともなってしまいます。日々世界中から優秀な研究論文が集まってくるジャーナルで、アクセプトを勝ち取るためには、内容の新規性、ジャーナルとの内容の関連性、幅広い影響力など様々な条件と共に「質の高いライティング」を兼ね備えている必要があります。

「論文におけるライティングの質」これが今回の講義のテーマです。

それでは、「ライティングの質」とは、具体的に何を言うのでしょうか?もちろんライティングに少しでも問題があれば、世紀の大発見であろうとあえなく却下されてしまう、と言いたいわけではありません。ライティングと研究内容の質は別の問題ではあります。しかし、論文が文字と図表を媒介に情報を伝える媒体である以上、ライティングの完成度は研究者やエディターが論文を読む目に直接的な影響を与える、という点に注意しなければならないのです。

著名な研究者であるDr. Paul T. Wongは、彼のエッセイ “7 Common Reasons Why Manuscripts Are Rejected” で、ライティングの質は、その論文に掲載価値があるかどうかを最も端的に見せてしまう要素であるため、研究者はライティングに神経を使う必要があると述べています。

「ライティングの質」を向上させるためのコツを、今回はmanuscript content と writing and compositionに分けて解説していきます。 

論文で起こりがちなミス

ライティングの問題は、単に言語面での英語の上手下手に限ったことではありません。それよりも、学術論文の形式に対する理解が乏しいために、基本的な構成から誤っている場合が多く見られるのは深刻な問題です。構成上の問題とは、多くの場合「しかるべき内容がしかるべきセクションに記述されていない」ことを指します。(研究論文の概要(アウトライン)の実用ガイド)

研究論文は、投稿するジャーナルや研究分野毎に少しずつ異なる規定を持っていても、基本的に守るべき体裁と構成があります。研究者は、自分の論文だから自分の言葉でまったくもってオリジナルに語るものだと考えてしまいがちですが、内容はともかく、形式が斬新であってはいけません。

アジア・アフリカ地域の研究者が医学ジャーナルに投稿した論文を調べた2013年の研究は、昨今の研究論文に見られる問題を端的に示しています。

調査対象となった42本の論文のうち、統計を取ってみると、すべてのセクションにわたって無視できないほどの問題点が発見されました。

著者は、調査対象の論文で発見された問題のうち、論文の記述内容の妥当性や独創性といった内容面に問題が見つかった論文はむしろ少数で、大多数が論文の構成や文法、スペル、スタイルにおいて明らかなエラーが見られたと述べています。これはつまり、研究者自身の発想や研究デザインには問題がないのにも関わらず、論文の記述によってリジェクトを受けるなど大きな不利益を被っている論文が多いということです。これは、研究者が英語論文の構成と基礎的な科学ライティングについて今一度見直す必要がある証拠であるとともに、基本事項を見直すだけでも受理率を向上させる余地は十分にあるということを意味しています。

論文の問題点を見つけるためのチェックリスト

自分のライティングの問題を改善するには、まずはどこにどのような問題があるのかを正確に知る必要があります。そこで、論文ライティングの問題点に気づくためのヒントとして、今回は英語論文でよくみられるミスについてカテゴリ別に整理してみました。

  1. 論文内容に対する誤解を招くタイトル設定
    タイトルが論文内容を的確に表していなかったり、挙句誤解を呼ぶような表現を使用してしまうのは、致命的なミスと言えます。例えば、特定の年齢の子どもを研究対象としているのにも関わらず、全年齢を対象にしたかのような表現を使用してしまうと、本当にターゲットとする読者に論文が届かなくなってしまいます。
  2. 正確でないAbstract 
    研究プロポーザルや助成金の申請のため、論文の完成前にアブストラクトを書き上げていた場合、全体の論文が書き終わったら必ずアブストラクト見直す必要があります。アブストラクトは単体で非常に重要な役割を担うため、論文内容とデータや結論の差が生じてしまうことは絶対に避けなくてはなりません。事前に書いておいたアブストラクトがある場合は、それを破棄して新しく書き直す方が正確です。
  3. 不十分なIntroduction
    イントロダクションは論文全体の概要として読者の興味を惹き、研究テーマの合理性や研究の重要性についての説明を提供するなど、重要な情報を含むセクションです。イントロダクションセクションで論文を読み進めるうえで最も重要な研究的疑問や仮説、研究目的や背景情報について明確な説明がなされていない(あるいは詳細に説明しすぎている)ケースがよく見られます。また、ResultやDiscussionで述べられている要素が、イントロダクションで無視されているものが多く見られますが、イントロダクションは必ず最後に書くようにし、論文全体の内容を踏まえた仕上がりにしましょう。
  4. 不適切なMethods
    研究方法は先行研究から借用することが多いため、自分の過去の論文や他の論文から丸ごと引用している例が多く見られます。しかし、これは適切な引用形式に従っていない場合、自己剽窃(self-plagiarism)にあたるため注意しなければなりません。自己剽窃の問題は、学生や若手研究者の論文審査において、エディターが頻繁に指摘している問題です。どこまでが自己剽窃と見なされるかは、いまだ曖昧な部分があるものの、複数回指摘を受けた場合は、ジャーナル側から論文の受け取り拒否を通達されることもあるため、注意しましょう。また、研究方法セクションは機械的に執筆できるため、まず最初に書き上げてしまうことが多いですが、研究を進行するうちに生じた変更や追加を取り逃していないか、最後に必ず確認するようにしましょう。
  5. 簡略すぎるResults
    ワード数制限に合わせるために、結果を非常に簡略に記述したり、必要な情報を省略していたりする場合が多く見られます。結果が量的に多く複雑な場合は、すべてを一覧にするのではなく、論文でメインとして扱いたい結果に絞って記述するのが良いでしょう。結果部分で情報の取捨選択を行った場合は、イントロダクションやアブストラクトの内容と対応しているかどうか確認するのを忘れてはいけません。
  6. 論理的でないDiscussion
    ディスカッション部分では、以下のような問題点が多く見られます。

こちらで紹介している要素は、すべて重要なポイントとなりますが、今回注目したいのは「論文タイトル」「アブストラクト」です。さきほど紹介したDr. Wongも、“pay special attention to the quality of writing in the abstract as well as the first paragraph…”とアブストラクトの重要性について述べています。

論文の第一印象を決定づけるタイトル

あまり気を遣わない研究者も多い反面、各種論文執筆ガイドでは常にその重要性が強調されているのが、論文のタイトルです。これは論文だけでなく、書籍やエッセイなどタイトルを持つすべてのライティングに言うことができます。

ここまでタイトルが重要なのは、何よりもまず読者が最初に目にするのがタイトルだからという単純な事実があります。タイトルでスペルや用語のミスを犯しているのは言語道断ですが、タイトルが大げさだったり、間違いとは言えないまでも用語使用に違和感を覚えたりすると、その先の本文を読む気も失せてしまうものです。これは裏を返せば、適切なタイトルが設定されている論文は、それだけでエディターや査読者、読者の目に触れる機会が多くなるということを意味します。論文が審査を受けるためには、まず人に読まれなくてはなりません。この点で、タイトル設定はジャーナル投稿を成功させるためのカギとも言えます。

良いタイトルは「強さ」「適切さ」「簡潔さ」の3つを兼ね備えている必要があります。この3要素を達成するために、以下のようなことに気を付けてみましょう。

論文の顔:アブストラクト

ジャーナルのエディター審査では、アブストラクトだけを使用することも多いため、アブストラクトは論文の適切な要約となるよう丁寧に作成する必要があります。チェックリストとして、以下のような点に注目して確認してみましょう。

論文のライティングと構成に関する注意点:参考資料

一字一句同じことを話しても、話し手の声色やイントネーション、表情、ジェスチャーによって聞き手の受け取り方は様々であるように、論文内容の伝達も、ライティングや構成といったスタイル面から非常に大きな影響を受けています。また、ライティングのスタイルは、読者が情報の信憑性を判断する際にも多大な影響を与えます。例えば、ニュース記事を読んでいても、誤字脱字だらけで文法も誤っているのでは、果たして報道されている内容は事実なのか?という疑問を抱いて当然でしょう。

2016年、ワードバイスでは校正文書で指摘されている部分をタイプ別に集計し、ノンネイティブが特に気を付けるべきライティングのポイントを分析して発表しました。(2016年ライティングレポート -英文校正データ徹底分析-)

カテゴリ別に分けた指摘事項の中で特に多かったのが、図から分かる通り、スタイル・語彙選択・文法・スペルの4つです。

このうちノンネイティブにとって改善が難しいスタイルや語彙選択に関しては、ワードバイスのリソースで様々な記事を通して解説しています。ぜひ有効にご活用いただき、アカデミックライティング能力を磨いていきましょう。

研究者のための英語ライティング:まとめ

今回は、台湾移植学会で講義させていただいた内容を元に、研究者が論文のライティングを自己点検するためのポイントを中心に解説してみました。この内容をきっかけに、論文のライティングや構造という面から、受理率向上のためのヒントを見つけていただければ幸いです。ワードバイスでは、各分野専門のエディターがこのように「伝わりやすいライティング」を目標にした英文校正を行っています。

参考資料

ワードバイスの英語論文校閲サービス

Wordviceの研究論文校閲サービスは、平均8年の校正経歴を誇る分野別のネイティブ校正者が、英文のネイティブチェックはもちろん、論文の伝わりやすさを総合的に校正するサービスです。ジャーナル指定のフォーマットに合わせて、最短9時間からトップジャーナル投稿レベルの英語に磨き上げます。お見積りとご注文は下記リンクより24時間年中無休で承っています。

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