母国語でない言語で学術論文や記事を書く場合に最も重視する点は、英語をあたかも母国語のように執筆する事とお思いではないですか? しかしながら、英語を話すネイティブでさえ“学術的”な執筆が自然に出来るわけではありません。学術的な書き方と多言語、執筆スタイルの間には様々な違いがあり、研究によると、学術文に関しては、経験の方が母国語話者であるステータスよりも上回るという結果がでています。この記事では、学術文の執筆においての重要点と、原稿を書いて自ら編集をする上での明確なガイドラインをご紹介します。
アカデミックライティングの慣習に従うべき時
学術的エッセイ、読書感想文、解題書目、研究ポスター、検査結果報告書、研究計画書、論文、出版物の原稿のような学術文を執筆する時は、学術文の慣習に従うべきです。おそらく以前から何度も“簡潔に”“効果的に”執筆するように言われてきた事でしょうが、それがどういう意味で、簡潔で効果的な文章の執筆方法とは何であるのかを理解出来なかったかもしれません。下記で学術文の主な要素と、学術文の執筆で避けるべき点を説明します。
目次
- アカデミックライティングとは?
- アカデミックライティングで混同しやすいこと
- 公式文書と非公式文書
- 明確で客観的な書き方
- 構造と一貫性
- 正しい文献引用
1.アカデミックライティングとは?
アカデミックライティングは記述的(例えば研究結果の箇所)、分析的(例えば異なる学説の比較)、説得力があったり(自らの見解)、批判的(他の研究者の見解を論じる時)であったりします。このような執筆方法は、読者を始めから最後まで導いてくれる明らかな文章構造基づいています。その上、課題に沿った論議と検証結果が明記されます。慣習や職業語は専門分野によって異なりますが、通常、学術文の執筆には先入観や個人の感情を交えない公式な語調やスタイルを使用します。
2.アカデミックライティングで混同しやすいこと
アカデミックライティングの執筆で重要なのは“ネイティブみたい”である事ではありません。実は、英語を母国語とするネイティブの友人や同僚との会話で学んだ日常会話の表現や慣用語は、論文や記事の執筆で使うべきではないのです。学術文は物語ではありませんし、読者を喜ばせるのが目的ではもありません。でもそれは、学術文は複雑で回りくどい長文や、難しい単語ばかりを使って表現しなければならないという事ではありません。実は、最近行われた研究で、不必要に複雑な単語を多数用いると、あまり知的に見られないという指摘をしています。学術文執筆における原理である公式性、明確性、正確性、構造性を守ってさえいれば、シンプルな言語と短文で(多くの読者に感謝して貰えます)仕上げていいのです。
3.公式文書と非公式文書
では、公式な文とはいったい何でしょうか?複雑な単語や長い文章、込み入った文法構造を使って読者を感銘させようとしたり、知的とかプロ級に見せたいと思っているかもしれません。でも公式文書はシンプルで簡素でいいのです(実は簡素はいい事なのです)。下記で記述する特質や非公式な言葉に注意して下さい。
- スラング: ケンブリッジ辞典では、スラングとは親しい知人や特定の社会組織に属している人々の間で使われる“非常に非公式な言語”と定義しています。あなたと友人もしくは同僚との間(その他の人々はあてはまりません)で常に話題にしている話や冗談をスラングと呼びます。口語と文語は明らかに違うので、このような表現は職業や学術目的の文語には絶対に使わないように。
- 慣用語(idioms)や使い古された決まり文句(clichés): 慣用語(イディオム)を使うとネイティブのように聞こえると思うかもしれませんが、慣用語は特定のお国柄や文化が表現されることが多く、全ての読者がそれを理解できるとは限りません。また、慣用語は、昔から多数の筆者が何度も使っている聞き飽きた表現なので、つまらなかったり怠慢な感じに捉えられたりします。
- 動詞の短縮: 近年のブログやリソース欄、時には新聞の記事でさえ、”don’t”や”haven’t”を見かけます。でも学術文ではこのような短縮形は使わないで、正しく綴る事が大切です。この規則は査読コメントへの回答レターのような編集者と査読者に直接あてる学術的やりとりにも当てはまります。
- 会話的文章: 学術文は大抵は客観的なので、読者と会話をしているような表現は避けましょう。研究論文では一人称代名詞(“I”や”we”)は使用できますが、読者を個人的に“you”とは絶対に呼ばないように。
4.構造と一貫性
あなたの研究記事や学術文は、始まり(表題、要約、序説)から終わり(考察、結論)まで、箇所ごとに副題を付けて、論理的な構造にするべきです。そして関連性のあるものに絞った必要情報を全て記載して、“何故この詳細が記載されているの?”とか“この方法を使用した理由を書き忘れたの?”と読者が不思議に思う事がないようにします。
全体的な構造の内容で、文節や文のレベルにおける一貫性にも気を配る必要があります。
- 全体的な構造: 読者に詳細を思い出して貰う(考察の箇所の始めの部分とか)以外は、学術文の中の異なる箇所で同じ情報を繰り返すのは避けましょう。読者が理解出来るように、略語は使用せずに全文字を綴る事。要約や序説の箇所では細かい情報を入れないで、記事の中で後にくる箇所で説明する事。同じ物を示す時には違う用語を使わない、また、様々に呼び方を変えた用語を複数個所で使わないこと。一つの用語に決めて、必要であれば文書の最初で定義して、文書の最初から最後まで同じ用語を使用する事。
- 文節のレベル(paragraph level): 通常、内容を変える時には新しい文節(パラグラフ)にしますが、その際正しい転換語(transition terms)を使います。一文節につき、一つのアイデアやトピックのみを記載しますが、編集の時に研究や分析の詳細の一部を消却するとしたら、そのトピックが記載されている全ての文節も消却する事を忘れないように。
- 文章レベル(sentence level): 文章内や文と文の区切りには、正しい転換語と句読点を使って、論理的に文から文へ情報が繋がるようにしましょう
5.明確で客観的なアカデミックライティング方法
学術文の筆者として、読者が自らの結論を出せるように、明確に、そして客観的に情報を提示するべきです。
-曖昧な表現は避けましょう: 研究論文や記事においては、一般的にはというような表現はあり得ません。必ず、誰が何をした、研究に使用した量、かかった期間を正確に明記します。”perhaps”,”maybe”, “a little”, “some”,”and so on” “etc.”のような曖昧な言葉は使わないように。実験や研究のタイムラインに注意を払い、現在と比較して事態が起きた時の動詞の時制を正しく使いましょう。
ダメな例: Participants were shown the faces, cars, animals, and so on, about three times. (参加者は顔、車、動物等の写真を、およそ3回見せられた。)
良い例: Participants saw each face, car, animal, house, and scene three times, except for two participants who could already name all pictures after two rounds. (2回見た後で全ての名前を言い当てた2名を除いて、参加者は顔、車、動物、家、場面の写真をそれぞれ3回見せられた。)
ダメな例: Some patients took medication when they visited our clinic. (患者の何人かは我々の病院を訪れた時薬を飲んだ。)
良い例: Five of our 20 patients were already on medication when they visited our clinic. (20人の患者のうち5人は、我々の病院を訪れた時には薬を使用していた。)
- 感情を表す言い回しは避けましょう: 例えば、臨床報告書で事象を表現する時は”horrendous”, ”disgusting”のような表現は避け、患者には”suffering from” ( 病気に苦しんでいる)という表現は避けましょう。感情を表さない表現を使う事です。その状況を強調したいのであれば、過去に書かれた他の研究者の表現を使い、必ず引用文献に明記しましょう。
ダメな例: Many patients suffer a lot because of the horrible disease. (多くの患者はその恐ろしい病気に苦しんでいる。)
良い例: The disease often affects the patients’ quality of life. (この病気はしばしば患者の生活の質に影響を及ぼす。)
-あなたの見解のみでなく証拠を提示しましょう: あなたの意見を読者に伝えるのではなく、読者が自らの結論に辿り着く情報提供をするべきです。あなたが、何故そうしたか、何故その手段を選んだか、どのような限界があるかを明確に説明するべきです。他の研究者の研究は正確に提示して、同意できない場合でも公平な立場を取るようにしましょう。
ダメな例: Adams et al. could not show clear results. (アダムたちは明確な結果を示すことが出来なかった。)
良い例: Since Adams et al. used a cognitive rather than a language scale, they could not distinguish between the two effects we report on here. (アダムたちは言語尺度ではなく認知尺度を使用した為、ここで報告する2つの効果の違いを識別できなかった。
6.正しい文献引用
別の文書から引用した全ての情報やデータは、あなたがここで公表する学術論文や記事以前に既に公表されていた知識やアイデアと、あなたがここで明らかにする知識やアイデアの区別を読者に知らせる必要があります。また、学術文で使用する画像や他の参考物、例えそれがオンライン、出版本、新聞から引用したものでも、引用元を提供して下さい。引用元は信用のおけるものである事(例えば出版本の記事、大学の図書館、学術データベースで、ウイキペディアやブログからではありません)で、誰が執筆したものか、いつ、どこで誰が出版したかという情報も必要です。
引用文献スタイルは複数あるので、授業概略(class syllabus)や学部のガイドラインを確認するか、出稿を予定しているジャーナルから受け取る執筆者への説明書を見て、指定されたスタイルを使用して下さい。一般的には括弧の中に執筆者名と出版年を入れるか、上付きの数字を文字の後につけて引用文献情報を文章内で提示して、文書の最後の箇所に全引用文献をリストアップします。たとえ言い換え(パラフレーズ)て引用しても、盗用の疑いを避ける為に引用文献に含めるべきです。また、自分自身が以前書いた文書から再使用したとしても(例えば、あなたの公表されていない大学の卒業論文とか)、自己盗用を避ける為に引用文献に含めるべきです。
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