2021年10月13日

自己盗用: 自分の執筆文書なら再使用できるの?

インターネットの到来で、学術文書を含め、あらゆる文書の内容を検索したり、コピペ作業が非常に簡単に出来るようになり、大学や出版社は盗用防止対策に力を入れています。その為、ほとんどの学生や研究者は、他人の執筆文を自分の執筆文として使用するのは非倫理的である上、自己の学歴に大きな打撃を与える得る事を承知しています。

ただ、たとえ自分自身のアイデア、研究、言葉だけを使用したとしても、自分で自己盗用をしている事を研究者たちは気づいていないかもしれません。おそらく“自分で自分の盗用なんておかしい”と思うかもしれません。それは、故意にでも知らず知らずにでも、過去の業績をあたかも新しい業績のように読者に思わせてしまうのは“自己盗用”と呼ばれ、通常は、他の盗用と同じくらい深刻な盗用と見なされます。

自己盗用とは、いったい何?

自己盗用とは、既に提出済み、出版/公表済みの自己の文書を引用文献の記載無くして再使用する事です。それは過去の文書で使用したデータ、全文書、文書の一部、グラフを全て含めます。本来、再使用された文書が、あたかも新しい原稿であるかのように読者に思わせてしまうのであれば、それは盗用なのです。

アメリカ心理学会は自己盗用を“非倫理的”、虚偽、著作権違法行為になり得ると表現しています。しかしながら、全ての文章やデータの再使用が非倫理や不法行為であるとは限らず、自己文書の再使用が許可される内容や度合いに関して、出版社や研究者の意見が必ずしも一致しているわけではありません。そこで、BioMed Centralが出版倫理委員会(Committee on Publication Ethics/COPE)と共同で、編集者の為の文書再使用に関するガイドラインを最近になって開発し、その後も常に改善を続けています。たとえあなたが大学院学生や、自己研究を出版する執筆者であっても、ここで記載する内容には自己盗用を避ける為の全知識が詰まっています。

目次:

  1. 明らかな自己盗用のケース(Obvious cases of self-plagiarism)
  2. それほど明確でない自己盗用のケース(Less obvious cases of self-plagiarism)
  3. 自己盗用が問題になる理由(Why is self-plagiarism problematic?)
  4. 再生利用が承認される場合(When is recycling work acceptable?)
  5. 自分で自分の盗用を避ける方法(How do you avoid plagiarizing yourself?)

明らかな自己盗用のケース(Obvious cases of self-plagiarism)

以下の記載は明らかな盗用のケースです。如何なる学術研究においても絶対にしないように。

  • 別過程で既に使用しているエッセイや研究課題の執筆文を提出する。
  • 出版されていない大学の卒論や大学院の論文で使用したデータ、結果、テキストを参考文献の記述無しで再使用する。
  • 編集者や読者に通知することなく、雑誌、本、会議で既に公表されているデータ、テキスト、結論を含めた文書を科学分野ジャーナルに投稿する

それほど明確でない自己盗用のケース(Less obvious cases of self-plagiarism)

明記しないで自己の学術文書を使用する事が、明らかな自己盗用とも言えない灰色(グレー)の領域にあてはまる場合もあります。以下のケースで、使用や引用をしたり他の執筆者の業績を参考にする際、してはいけない注意点を説明します。

  • 以前出版した自己の研究課題文書を、実験方法やデザインが同じであるという理由で現在執筆している原稿に実験方法箇所の文章や画像をコピーする。自分の研究は自分のもの、と思うかもしれませんが、文書のジャーナル掲載が決まると、著作権は出版社に譲り渡されます。そして出版物はジャーナルの所有物となり、執筆者でさえ、適切な引用文献や許可が無ければ、その出版物の如何なる箇所も再使用する事は許されないのです。クリエイティブ コモンズ ライセンスを許可しているオープンアクセスジャーナル(閲覧と設定された条件下のもとで再使用が出来る論文)であれば自己の文書を再使用することが出来ます。それでも出版物の引用文献が必要で、過去の研究を新研究として記述する事は許されません。
  • 出版数を増やす為に、大きな研究を複数の小さな研究に分割すること。これを“サラミ スライシング(Salami Slicing)”と呼びます。あなたの出版物のリストは増えるかもしれませんが、長い目で見ると、科学的成果とあなた自身の評判を歪める事になりかねません。このような事態防止の為、最近は多くの出版社は原稿を査読に出す前に、同じ課題で最近出版したり投稿した文書を執筆者にリストアップさせます。
  • 多言語で執筆された過去の文書を翻訳して、翻訳文を新たなオリジナル版として投稿する事。この手の盗用は見つかりづらいのですが、結局たどり着く問題は同じです。読者を誤解に導き、著作権を侵害し、誰かにオリジナルと翻訳版の繋がりを指摘された場合には、あなたの評判に傷がつくでしょう。

かいつまんで、自己盗用が問題になる理由(Why is self-plagiarism problematic?)

自己文書を再使用する執筆者の為に、自己盗用が問題になる幾つかの理由を取り上げてみます。

  • 大学によって盗用ポリシーは異なりますが、再提出というのは常に学業上の不正行為であり、その課題の成績が不合格になり得る違法行為とみなされます。繰り返してそのような行動をとると、停学や放校のような更に厳しい結果に導かれるかもしれません。
  • 全ての学術者や出版社が自己盗用を真の学術上不正行為だと認めている訳ではありませんが、一般的には科学的公正性の違反であると見なされ、あなたの評判のみでなく、もっと広い科学界における公な信頼にも傷がつくかもしれません。
  • 上記で述べたように、あなたの文書が科学ジャーナルや本に出版されたのであれば、おそらく著作権は出版社に譲り渡っています。許可や明確な引用なしで再使用する行為は著作権法違反になります。
  • 現在、大半のジャーナルは重複出版を防ぐために盗用探知ソフトウェアを使用するので、他の文書からコピーした文章はソフトウェアが要注意として摘出する事でしょう。たとえその原稿が、この時点で出版社から却下されていなくても、出版社は書き直しと再提出を求めてくるので出版過程を遅らせる結果になるでしょう。多くの自己盗用は、特に研究型大学に多くいがちな“出版しなければ消滅する”とプレッシャーを感じている作者たちが、出来るだけ多くの文書を短時間で出版しようとして起こる場合が多いのですが、盗用文書を提出すると、逆に向かい火をあびてしまいます。

再生利用が承認される場合(When is recycling work acceptable?)

以下の場合は、自己文書の再利用が許可されます。

(1)必ずその箇所が論文や学術文書で必要な場合
(2)文書内で、過去の文書の引用を明確に表示している場合。

外国語で執筆した出版記事を英語に翻訳して、国際研究コミュニティで読めるようにするのはオーケーです。でも、以前に出版されたことが無いような振りをするのはよくありません。

すなわち、例えば外国語版と英語版を別の文書として自己の出版物リストに記載するのは許されません。本を執筆したり、今まで研究してきた課題を本の一部に執筆したりする時、過去の出版文書を参考にする事があるかもしれません。そのような場合は、正しく引用文献を明記して、編集者と出版社に、自己の過去の出版された(出版されていなくても)どの文書のどの箇所から引用しているかを伝えれば問題ありません。更に、過去の文書に深く関わった執筆者全員に文書を再使用する旨を伝え、事前許可を取る事を忘れないように。

自己盗用を避ける方法(How do you avoid plagiarizing yourself?)

ここでは、うっかりとしてしまう自己盗用を避ける為の簡単なガイドラインをご案内します。

  • 宿題を再使用しない、あるいは如何なる学習文書も教授や個人指導者に相談なしに再使用しないこと。
  • 過去の自己出版物の一部を現在の原稿に直接コピーするよりも、過去の自己出版物を引用文献として明記する(例えば、”we used the same method described in Smith et al., 2020”) 。可能な限り別の言葉に言い換える(paraphrase)のもいいですが、その場合でも過去の出版物を明確に表示しましょう。ジャーナルでは、記事の他の箇所に比べて、手段(method)の箇所での重複テキストを許可する傾向にありますが、編集者との行ったり来たりのやり取りが長引いて出版が遅れてしまわないように、最初から、再使用する箇所の量が、新しく執筆した箇所の量よりも遥かに少ない事を確認し、更に再使用する過去の記事が、新しく執筆した記事を見劣りさせる事のないように注意を払いましょう。
  • 過去のアイデアを、あたかも新コンセプトのように偽ることの無いように。自己開発した課題や手段(他言語であるかもしれません)で既に出版した記事を、興味深く関連性を出すために、あたかも今思いついたように表示する事は避けるべきです。
  • 投稿するジャーナルのガイドラインを理解して、求められている偽りのない適切な盗用陳述のみを提供するように(例えば、“the work presented here has not been published before”/ここで述べている事は、過去に公表されていない)。不明点は投稿する前に編集者に問い合わせてください。また、問題が発生しそうな場合は、その旨を投稿用カバーレターに記載するのもよいでしょう。
  • ジャーナルのガイドラインで許可されていない限り、一度に複数のジャーナルに同じ原稿を投稿したり、古い記事を新たに投稿し直したりしないこと。原稿が拒否されたり自分から正式に辞退した後でないと、別の出版社に投稿する事は出来ません。
  • 過去の出版物に執筆者としてリストされている全員に連絡を取り、過去の出版物を再使用する旨を伝え、先ずは全員の許可を得て下さい。