2023年08月31日

原稿フォーマット:ジャーナルからの投稿規定を理解する

Wordvice

2011年に紹介されて以来、「あなたの論文はあなたの形式で」(Your Paper Your Way) というコンセプトは多くの科学ジャーナルに導入されてきましたが、多くのジャーナルは今でも自社特定のガイドラインに沿った投稿規定を著者に要求して来ます。これはフォントの種類、マージンのサイズ、図中に取り入れ可能なパネルの数などです。著者にとっては、これらのガイドライン自体が、記事の提出や査読(peer review)過程を長く困難なものにします。特に、原稿のフォーマットが何度も却下され、発行にたどり着くまでに(時には複数回)別のジャーナルスタイルにフォーマットを変えなければならない場合はなおさらです。

でも、多くの著者にとっての最大の頭痛の種は、ジャーナルが投稿時に要求してくるガイドラインを正しく理解する事です。それは言葉の壁の問題だけではなく、ジャーナルからの指示が時には不明確で矛盾しているからです。ここではジャーナルからのガイドラインに従う際の最大重要点と、ジャーナルの規定に従っていないという理由で初回投稿時に原稿が拒絶されないように、起こりがちな問題を回避するコツを記述します。

著者用ガイドラインに従わないと原稿は確実に没書されるでしょう。

ジャーナルの特定の規定に従わないと原稿は没書されてしまうでしょうか?

手短に答えると「おそらく拒絶されます」です。原稿が拒絶(rejected)されるのは、テクニカル(例えば不相応な方法論や不正確な結論)上、もしくは編集上の理由からです。たとえ自分の研究課題が輝かしく、革新的な発見であり、世界中がその研究に注目すると確信しても、投稿される多数の原稿から厳選する立場の編集者たちは、あなたの原稿を見て、彼らのジャーナルの基準範囲に当てはまっていないとか、一般的なフォーマットから外れている(例えば原稿が長すぎる)という理由で、更なる詳細に触れようともせずに拒否するかもしれません。そのような理由で没書されない為の一番よい手段は、投稿するジャーナルを決める前から、一般構造体と、該当分野でのフォーマットのガイドラインに従って原稿を準備する事です。通常、IMRD型の構成 (IMRD structureもしくはIMRaD) に従って下書きを書き、その後で投稿を予定しているジャーナルの特定スタイル(例えば書中の引用文献や参照文献のリスト等に関して)に順応していきます。IMRD型の構成はIntroduction(緒言)、Methods(研究方法)、Result(研究結果)、Discussion(考察)という4つの要素から成り立っています。

目次:


1.投稿規定を探す
2.目的と領域
3.準備時のガイドライン
4.投稿過程
5.よくある曖昧さや矛盾
6.投稿前の問い合わせ

投稿規定を探す

ジャーナルへの投稿ガイドラインは、投稿先ジャーナルのホームページから見る事が出来ます。通常は「author (著者)」「instructions (投稿規定)」「guidelines (ガイドライン)」というような名前か、それらの言葉が連名されているタブにあります。ジャーナルによっては、「About (当ジャーナルについて) 」「Content (目次) 」「Current Issue (最新号)」「Archive (アーカイブ)」とは別の、「Publish (発行する)」「Submit (投稿する)」「Contribute (寄稿する)」というようなページから「For Authors (著者用)」に進む場合もあります。これは審査員用(For Referees)や書評家用(For Reviewers)が進むページからは区別されてます。投稿規定へ進むリンクが一目で見つからなかったとしても、ガイドラインの規定が無いなどと思い込まないように。どこかにある筈です。どうしても見つからない場合は、サイト内の検索機能やGoogleの検索で、「(投稿先ジャーナル名/target journal)投稿規定(author guidelines)」で検索してみて下さい。

目的と領域

次に、あなたの原稿が投稿先ジャーナルの「aims and scope(目的と領域)」に相応している事を確認します。Aims and scopeやジャーナルの目的(purpose)の供述が投稿規定の箇所で見当たらない場合は、主ページ(main page)に戻り検索機能から検索して下さい。ジャーナルのaims and scopeに相応しているという事は、あなたの研究分野がジャーナルが取り上げる主題分野に相応しているという事です(例えば、マウスの行動に関する研究書を人類の研究のみを主題にするジャーナルには投稿しないように)。更に、あなたの研究課題が同ジャーナルの読者の領域と一致している事が重要です(例えば基礎研究者(basic researcher)と医師(medical practitioners)は違います)。ジャーナルの主題分野領域外の原稿は没書される最大の理由の一つです。

更に、そのジャーナルがあなたの原稿の類を出版する旨を確認します。というのは、医療関係の1ケースに関する研究書を提出したとしましょう。でもそのジャーナルは4人以上の患者を対象にした長期にわたる研究と文献レビューのみを出版するのであれば、編集者があなたの原稿だけを例外として出版してくれるなどと期待しても無駄です。その上、ジャーナルが出版する記事には書評(reviews)が含まれていない場合が多く、もし含まれていても更に特定の規定やガイドラインを条件としています(検索方法/search methodologyや対象期間/covered periodや参照にした文献数/amount of included literature等です)。あなたがどれほど特定のジャーナルでの出版を希望しても、上記で記載した詳細を注意深く確認しなかったり、あなたの原稿はいずれにしても編集者に受け入れて貰えるであろうなど軽く考えると、返って裏目に出てしまいます。どこに投稿すればいいか分からない場合は適切なジャーナルの探し方(how to find the right journal)の記事をご覧ください。

準備時のガイドライン

あなたの記事が出版希望のジャーナルと相応している事を確認したら、投稿規定に戻り、原稿フォーマットが下記のジャーナルのスタイルの要素に沿っている事を注意深くチェックしましょう。

1.タイトルページ: ジャーナルの査読過程には片側盲検(single-blind)と二重盲検(double-blind)があります。片側盲検(single-blind)とは、査読者は著者名と所属先が分かりますが、著者は査読者が誰か分からない事。二重盲検(double-blind)とは著者も査読者もお互い誰か分からない事です。二重盲検(double-blind)の場合、タイトルページと原稿は分ける必要があり、通常は別のファイルとして提出されます。原稿の中では機関名や機関審査委員会や著者名の記述は許されません。更に査読過程においてジャーナルが著者に連絡を取る場合、連絡先である責任著者(corresponding author)をタイトルページで必ず明記するように(但しタイトルページのみの記載である事)。

査読者に原稿を回す前に匿名化が必要な場合、原稿を著者に返却しなければなりませんが、初期投稿で責任者が不明だったりすると、編集者は不必要な時間と努力を費やしたくないので、あなたの原稿よりも他著者の原稿を優先するかもしれません。

2. 原稿の長さ: 原稿に記載する全ての情報は不可欠であると思うかもしれませんが、投稿先ジャーナルにワード数、表、図、参考文献数に規定制限があれば、その規定制限を無視して投稿しても大抵は査読者に回される前に掲載拒否(デスクリジェクト)されます。編集者があなたの研究原稿に非常に深い興味を示すような稀なケースの場合は、変更と再提出を指示され、その後で査読に回される事でしょう。研究情報は削りたくないけれど、出版社との行ったり来たりのやり取りや没書のリスクを避けたいのであれば、「Supplemental(補足)」ファイルの提出が可能かジャーナルに確認して、投稿する前に原稿を整理して下さい。

3.情報記載箇所に関する特定の規則: 原稿に記載される詳細と記載箇所に関して、非常に厳密な考えを持つジャーナルがあります。それらの規則は少し過剰すぎると思えるかもしれませんが、ジャーナルがその規則をあなたの為に曲げるなどと期待はしないように。一例ですが、結論や研究計画を記事の題名に入れるべきか否かはガイドラインで念入りに確認して下さい。同様に緒言(introduction)の箇所の最後には、研究結果の簡単な要約の記述が可能か、もしくは研究課題と方法論の概要のみに留めるべきであるか等、ジャーナルの指示に従って下さい。

投稿の際のその他の重要な要素として、資金調達(funding)、利益相反の可能性(potential conflicts of interest)、倫理的コンプライアンス(ethical compliance)、データ利用可能性(data availability)に関する宣言や声明(declarations/statement)があります。これらの情報はタイトルページに記載が必要であるか(原稿が匿名である場合は特に)、それとも本文の最後の箇所にリストするべきであるかはジャーナルと確認しましょう。

4. 表(tables)と図(figures): 多くのジャーナルは、査読過程の簡素化の為に初回投稿時に全ての図と表を含めた原稿をテキストファイルで提出するように指示してきます。たとえ原稿の出版決定後に特定のフォーマットに変換した別のファイルを提出し直さなければならないとしてもです。大抵のジャーナルは、初回投稿であっても高解像度(high-resolution)や明快度(clarity)、可読性(readability)の高質性と、特別なラベル付けを求めてきます。これらの詳細はウエブサイトの投稿ガイドラインで確認して、たとえ過剰過ぎ(例えばフォント、フォントサイズ、配色、ファイルのフォーマット)て大量の時間が掛かると思っても、これらの規則は絶対に無視しないで下さい。あなた(著者)の原稿はジャーナルのフォーマットからかけ離れ過ぎているとか、著者がジャーナルの規則に応じる気が無いとジャーナルの編集者が感じた場合は、簡単に原稿は却下されることでしょう。

5. テキストのフォーマット: 多くのジャーナルは、フォント種類、フォントサイズ、マージンサイズ、行間の使用の規則を設定しています。少しこだわり過ぎているように感じるかもしれませんが、一般のジャーナル記事のフォーマットに沿って原稿を作成していれば、これらの規定を取り入れるのは簡単です。そして、概要(abstract)や本文(main text)の箇所のヘッダーの使い方やキャピタリゼーションの指定、例えば、見出しの先頭文字の大文字化(title case)と文章の先頭の1文字のみを大文字化する(sentence case)等、連続的もしくは特定箇所のページやラインの番号付けに関するガイドラインに必ず従って下さい。

その他にも、ジャーナルの規定を確認する際見落としてはならないのは、そのジャーナルは米国式と英国式、どちらのスペルと句読点を使用するか、そして略語は一番最初に登場する時はスペルアウトするべきであるか、それとも本文の前にリストにして記載するべきか、ジャーナルが希望する文献スタイルは何であるか等です。

6. カバーレター: 全てのジャーナルがカバーレターを要求するわけではありませんが、要求する場合は、どのような声明文(例えば、同原稿は過去に出版されたことが無い)とか、どのような情報(例えば査読者の意見)を記載するべきかなどの指示が出されることでしょう。カバーレターとは、研究の詳細に触れる前に、著者が自らの原稿が如何に出版価値があるかを編集者に説得する機会なので、ガイドラインに従うだけではなく、あなたのベストを尽くすべきです。

投稿過程

さて、重要な規定とガイドラインに沿った原稿が出来上がれば、ジャーナルのオンラインポータルから投稿する準備がほぼ完了です。ここで場合によっては更に要求される追加事項があります。それは、ジャーナルのウエブサイトからダウンロードして記入する書類(例えば著作者声明文/authorship statements) と共通チェックリスト(例えばランダム化臨床試験用のCONSORT声明、システマティックレビューとメタアナリシス用のPRISMA声明)です。面倒くさがってこの過程を無視するようなことは絶対にしないように。そして、先ず原稿の査読が行われた後でこれらの書類の提出が要求されるのかはジャーナルからの連絡を待ちましょう。編集者は、ジャーナル出版を決定する為の査読者の時間を費やす価値がある原稿であるかを、上記のようなチェックリストから判断して、基準の規則やガイドラインに沿った原稿である事を確認したいのです。

よくある曖昧さや矛盾

時々、曖昧で矛盾している為、著者が困惑してしまい、どの規則に沿うべきか分からなくなってしまうジャーナルのガイドラインを見かけます。通常これらの矛盾が発生する理由は、ジャーナルが長い時間をかけて自製オリジナルのガイドラインに詳細を追加したり、他のジャーナルのガイドラインと組み合わせたりした後で、全体のガイドラインに誰も目を通さなかったからです。でも、このような矛盾に突き当たっても失望することはありません。カバーレターを通してジャーナルの概要のフォーマットの規則が不明だった旨を編集者に伝え、査読過程での指示を待つようにしてください。そして、そのような矛盾にぶつかった時に備えたアドバイスを下記で記載してみました。

声明文の配置(Placement of statements):  タイトルページと本文の最後に謝辞(acknowledgements)と資金調達声明(funding statement)の記載を要求するガイドラインがかなり頻繁にあります。この場合、たとえ指示された内容が定かでなくても、同じ声明文をリピートしたり、声明文を手あたり次第の場所で分けて、半分をタイトルページに、もう半分を本文の最後に記載するようなことはしないように気を付けましょう。先ずはジャーナルの査読過程が片側盲検(single-blind)と二重盲検(double-blind)のどちらであるかを確認します。原稿に著者名(もしくはイニシャル)、場所、機関名の記載を許可されていない場合は、全ての声明文は個別のタイトルページに記載します。何故なら資金調達情報や倫理声明書(ethical statements)には通常それらの詳細情報が含まれるからです。原稿を匿名にする必要がないのであれば、原稿の中の配置個所を決めて、全声明文を一緒に配置します。これらの声明文の配置が理由で編集者があなたの原稿を拒否する事はありませんが、あなたの原稿が全体的に乱雑だったり、手当たり次第の場所に配置したり区切ったりすると編集者に対するあなたの印象は悪くなります。

ワード数(word counts): ワード数の規定が原稿全体(概要や声明文を含めた)に対してなのか、本文のみに対してなのか定かでない場合が殆どです。原稿の全箇所を含めると規定のワード数を超えてしまうけれど、数箇所を含めなければ規定ワード数を超えないのであれば、ターゲットにしているジャーナルの最新号に掲載されている記事を見て、実際のジャーナルからの規定を予測して下さい。それでも分からなければ疑問点をカバーレターに記述して、必要であればワード数を削減する意志がある旨を伝えます。でも、これは原稿のワード数がジャーナル既定のワード数に近い場合のみ当てはまります。あなたの原稿が規定ワード数を遥かに超えているのであれば、自分と編集者の時間を無駄にしないで、原稿を短くするか、もしくはそれほど変更しなくてもよい別のジャーナルを選ぶべきです。

文献スタイル(reference style):  通常、ジャーナルから文章で文献スタイルの説明があり、その後で記事の引用方法の例が提供されますが、これらの例は不明瞭(例えばジャーナル名の略称と句読点の使用方法に関して)だったり、文章での説明とは全く逆であったりするケースが多いです。その場合、ジャーナルの最新号を見て、既に発行された記事の文献リストを参考にして下さい。

不明瞭なフォーマットのガイドライン (no clear formatting guidelines):  ジャーナルからフォントや行間の案内がない場合は、一般基準に従って最も簡素でベーシックなフォーマットを使用して下さい。Times New Roman、フォントサイズ12、ダブルスペース、ページ内の均等割り付け形式無し(no text justification)、1インチマージン、通しページ番号、1/2インチの段落インデントから始めてみましょう。その後で、ヘッダーの名前付け、大文字使用(キャピタリゼーション)方法、引用スタイル等が首尾一貫している事を確認していれば、ジャーナルの査読過程の指示に合わせる変更作業が簡単になります。

投稿前の問い合わせ: 

投稿を希望しているジャーナルのフォーマットに合わせる為の原稿変更に多大な作業を要し、その上、それだけの努力を費やしても出版される保証が無いと思っている著者は、投稿前に事前に問い合わせの出来るPre-submission inquiryを利用するべきです。このリクエストはカバーレターのような形式でイーメールで問い合わせが出来ますので、あなたの研究がそのジャーナルに関係性があり出版に値する理由を述べる事が出来ます。そして原稿の概要に関連した情報をイーメールの本体にコピーして挿入するか、もしくは添付書類として送ります。投稿前の問い合わせに関する案内と問い合わせ方法をガイドラインの中で説明するジャーナルもありますが、説明しないジャーナルも多数あります。投稿前の問い合わせは編集長宛てになります。もしも自らの記事がジャーナル出版されないのではないかと疑問を抱く理由(例えば、そのジャーナルには、あなたの研究課題に関連する記事の過去の出版が無かったり、あなたの研究の専門分野ではあまり使用されない方法論であったり)があるのであれば、投稿前の問い合わせをしてみましょう。たとえ思わしくない返事を受け取ったとしても、無駄な時間を費やさずに済むわけですから、直ぐに他のジャーナルへの投稿に進路を変えましょう。

正しい英語で原稿を執筆する事は、研究内容、情報、データを正確に伝えるのと同じくらい重要な事です。投稿前には、いかなる研究論文や記事もプロの編集と英文校正を受けましょう。そして、下書き原稿のチェックは、Wordvice AI無料オンライン文法チェックからどうぞ。

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